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きぐるみ隊その4

「あ、そいで何が言いたかったんだっけ?」
「うん?えっと、あ、そうだ!」

一頻り「はにーぽっぷこーん」とジュースを堪能し
お腹が膨れて、うつらうつらと眠気もさしてきた幼女に
スティングが尋ねると、ハッと当初の目的を思い出した
カガリは立ち上がり、スティングの顔近くに自分の顔を
近づけた。甘くて優しい匂いのするカガリの、
その柔らかそうな頬に、思わず彼は人差し指を当ててみる。
カガリはそれに嫌がることもなく、「にゃ」と笑顔を作った。
そんな彼女の仕草に、スティングとアウルは顔を見合わせ
アウルもカガリの柔らかな金髪をくしゃくしゃと撫でた。

大きな瞳が2人を見上げる。
「あのなあ、二人でなにかひろっただろう?」

え?どうしてそのことを?と2人はまた
先程とは違った意味で顔を見合わせる。

「あのな、ひろったものは《けいさつ》に持って
いかないといけないんだぞ。そうしないとな、
落としたひとが、こまっちゃうんだぞ!」

大きな瞳がまっすぐに、まだ少し舌足らずな
可愛らしい声と共に見詰めてくる。スティングは
困ったな、と頭をかき、アウルはうーんと唸り
芝の上に伸びをする形で寝転んだ。

「確かに、大金・・・って分かんのかな
大きなお金を拾ったよ。それにさ、それを本当は
警察に持っていかないといけないのも
分かってるよ」
「そうなのか!?良かった!」

カガリはスティングのももの上に乗ったまま
ほうっと安堵した。《なあんだ!すぐに
解決だぞ!良かった~》

「でもさ」
アウルは腹筋の力で、上半身を起こし、芝を1握り
掴み、ふっと息で飛ばす。

「その金をさあ、警察に持って行きたくないんだよね」
「ええ!?ど、どうしてだ!?」

笑顔が見る間に涙目になる様に
あーあ、やっぱり、とアウルは深くため息をつく。

「だってさ、僕ら孤児だからさ・・・、って孤児って
分かんないか。あのさ、親のこと知らなくてさ
施設で育ってるわけ。そこは、その自由があんま
なくてさ。お金とかも自由になんないのさ。
だから、その拾ったお金は、本当のこと言って
超ラッキーって感じなんだよね。あーちょっと分かり
難いかな。何て言えばいい?スティング?」

いきなり話しを振られた年上の彼は、
ほあんとして自分を見上げてくる幼女の
髪を撫でた。その青年の目がとても悲しそうに
細められたのを見て、カガリはどうしてか
分からなかったが、きゅっと胸が締め付け
られるのを感じた。

「あのな、俺達・・・いつも一緒にいるのは3人
なんだけど、俺達は親がいない子供達が暮らす
大きな家で、みんなで暮らしてるんだ。大きく
なったら、自分たちでお金を稼いで・・・、
作って、その大きな家を出てもいいんだけどな。
それで、今俺達は、大きな家から出て、自分達
だけでも暮らしていけるように、技術を付けて・・・
えーっと仕事ができるように努力してんだよ。
でも今はまだ仕事をしていないからさ、
自分であんまり買い物とかできないのさ。
服とかも全部お下がり・・・、えー、他の
人の使ったものをもらってんだ。それで、
おれ達には妹みたいなヤツがいてさ、
そいつに何か新しいもんでも買ってやりたいな
って思ってんだよ・・・」
「おとーたまやおかーたまがいないの、か?
それはさびしいな・・・。わたしも、おとーたまと
おかーたまといちゅも離れてて、さびしいんだ・・・
でも、みんなと一緒だから、平気だ!
それにわたしもいっぱい、みんなが着ていた
お洋服をお直ししてもらったのを
もらうんだ。もしかして似てるのかな?
わたしたち・・・?」

カガリの発言に驚いたのはスティングとアウルだった。
あまり詳しいことは分からなかったが、カガリが親と
共に暮らしていないことは分かった。周りに
世話をしてくれる人間がいても、やはり
親が近くにいないというのは、このぐらいの
子供にとっては悲しいことも多いだろう、と
自分の過去を思い出しながら思う。

「で、でもな・・・」
カガリはスティングの胸元をきゅっと掴んだ。
「でもな、やっぱり拾ったものは警察に
届けないと駄目なんだ・・・。だって、そうしないと
それを落とした人がきっとこまってる・・・」

こんな小さい子に・・・
スティングは下唇を噛み、アウルを見やる。
「なあ、仕方ない、今回は警察にーーーーー」
「嫌だよ」

アウルはガバッと立ち上がり、スティングとカガリを
交互に見詰めた。カガリはびくっと身を固くし、
スティングはそのカガリの身が自分のももから
落ちてしまわないよう、手に力を入れて
アウルを仰いだ。

「アウル・・・」
「だて・・・、分かってるさ!本当は警察に行かないと
いけないことくらい。だけどさ、だけどこんなチャンス
めったにないことなんだぜ!もったいないじゃん!」

アウルは叫ぶように言いはなち、2人に背を向けた。
スティングはそんな彼に声を掛けようとし、やめた。
カガリは、「警察に行かなければいけない」ことを
認識しつつも、そうしないアウルの心理と2人の状況
に考えが追いついていかず、ただ「自分の力では
解決できない」ことだけを幼いながらも感じ
悲しみがこみ上げてきた。

ぐずっ、ぐずっ。
思わず流れ出る涙に目の前がにじむ。
スティングはそんな彼女の頭をなぜ、
ハンカチで、優しく涙を拭いてやり、出ていた
鼻をティッシュでぬぐってやった。

どうしよう、どうしよう・・・
《きぐるみ隊》のちゃんとした一員として
わたしは、「拾ったもの」を「けいさつ」に
届けるように2人に分かってもらわないと
いけないのに・・・どうしたら良いんだろう・・・

カガリがその小さな体をさらに小さくして
スティングの胸で震えていると、その体に
すり寄る球体の感覚があった。

「あ!」
カガリはハロの存在を思い出し
スティングを仰ぎ見、ニッコリと
笑んで、芝に降りた。

「いまから変身するな!ちょっと待っててくれ!」

「へ?」「は?」
泣いたと思ったら笑顔になり
なにやら不思議なことを言う幼女に
2人はまたしてもまぬけな声を発してしまう。
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Author:andc/zero
ちょっと遠回り?でもじつはそれが直線だった。そしてちゃんと理想に向かって歩いてる、そういう感じでいきたいです。

        
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